最高の笑顔


この日の巴里は、どこか悲しい音のする雨が降っていた。
まるで、花火の心に同調するように・・・。


「あと一週間・・・」
花火はそうつぶやいた。

大神は、その日が来れば日本に、トーキョーに帰ってしまう。
花火は、この残された日々を、悲しみと共に過ごすはずだった。

しかし、その花火を誰よりも心配し、そして理解する女性
の一言が、花火を悲しみの呪縛から解放した。

「花火・・・生きていればまた会える。いつかトーキョー
 に・・・隊長に会いに行ける日がくる!」

そしてグリシーヌは、今出来ることをするために、
隊長の所へ行ってくるがよい、と、花火に告げた。

「グリシーヌ・・・ありがとう・・・私は・・・」

この親友の一言により、「あと一週間・・・」
その日が来るまで、一秒でも長く、大神さんと一緒の
時を過ごそう。花火はそう心に誓った。

そして、ブルーメール邸を飛び出し、大神の元へ駆け出し
て行った。

大神に、今出来る精一杯の、そして最高の笑顔を見せる
ために。


この日の巴里は、いつしか暖かい日差しに包まれていた。
まるで、花火の心に同調するように・・・。


FIN